これも前回に引き続き、遠藤渉先生です。私が公立気仙沼総合病院(現 気仙沼市立病院)で研修医をしていたときの上司が遠藤先生でした。でも、これは遠藤先生に限らず、外科の教室であれば、どこでも教えているかもしれません。
外科医になってすぐの頃は「リズムが大事だ」と言われていることがよく分からず、「リズムって、何ですか」と質問しても「リズムはリズムだよ」と返されてしまい、そのときは分からなかったのですが、少しずつ分かるようになりました。
手術前に画像検査などでイメージをしていたとしても、手術中にこの結合組織を切るのか切らないのか、この索状物は温存すべきか、切断すべきかなど、迷う場面があります。一つ迷ってはそこに5分、また迷っては5分などと悩んでいたら、手術はずっと終わりません。手術が上手ではない人は基本的に手術時間が長いんです。その場で解剖書を読んだり、議論したりもできないので、外科医には手際よく判断する力が求められます。若い外科医にも手術がうまい人が大勢いますが、手術はある意味、才能なのだと思います。
コラム・連載
第6回 手術はリズム、判断力、冷静さ
第6回
手術はリズム、判断力、冷静さ
《 2023.10.15 》
著者プロフィール
著者名:石井 正
1963年に東京都世田谷区で生まれる。1989年に東北大学を卒業後、公立気仙沼総合病院(現 気仙沼市立病院)で研修医となる。1992年に東北大学第二外科(現 先進外科学)に入局する。2002年に石巻赤十字病院第一外科部長に就任する。2007年に石巻赤十字病院医療社会事業部長を兼任し、外科勤務の一方で、災害医療に携わる。2011年2月に宮城県から災害医療コーディネーターを委嘱される。2011年3月に東日本大震災に遭い、宮城県災害医療コーディネーターとして、石巻医療圏の医療救護活動を統括する。2012年10月に東北大学病院総合地域医療教育支援部教授に就任する。現在は卒後研修センター副センター長、総合診療科科長、漢方内科科長を兼任する。
日本外科学会外科専門医・指導医、日本消化器外科学会消化器外科専門医・指導医、日本プライマリ・ケア連合学会プライマリ・ケア認定医・指導医、社会医学系専門医・指導医など。
石井正教授の連載第2シリーズは石井教授が新進の医師だったときに東北大学医学部第二外科(現 消化器外科)学分野(診療科:総合外科)で受けてこられた「教え」を毎月ご紹介していきます。
バックナンバー
- 地域医療を支えた東北大学病院の教え
- 12. フィジシャン・サイエンティストに
- 11. 怒られるうちが花
- 10. 人生は全て修行だ
- 09. 始まれば、必ず終わる
- 08. 「そうすべきではないですか」ではなく「そうしましょうか」
- 07. まあ、診ますか
- 06. 手術はリズム、判断力、冷静さ
- 05. 世の中、いろいろだから
- 04. 求めなければ、何も得られない
- 03. 愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ
- 02. 迷ったら、やれ
- 01. シミュレーションできるくらい準備せよ
- 精神科医とは、病気ではなく人間を診るもの 井原 裕Dr. 獨協医科大学越谷病院 こころの診療科教授
- がん専門病院での研修の奨め 木下 平Dr. 愛知県がんセンター 総長
- 医学研究のすすめ 武田 憲夫Dr. 鶴岡市立湯田川温泉リハビリテーション病院 院長
- 私の研究 一瀬 幸人Dr. 国立病院機構 九州がんセンター 臨床研究センター長
- 次代を担う君達へ 菊池 臣一Dr. 福島県立医科大学 前理事長兼学長
- 若い医師へ向けたメッセージ 安藤 正明Dr. 倉敷成人病センター 副院長・内視鏡手術センター長