総合診療内科紹介
病院における総合診療医の役割について、お聞かせください
病院における総合診療と言えば、まずは大学病院での総合診療だと思います。外来型の総合診療部門を中心に、どの科にかかるべきか、どういう診療が適切かを、問診を中心に、身体診察、基本検査を駆使し診療を行っています。また、他院で診断に難渋して紹介されてくる診断困難症例を解決していく高度な診療力をもっているのも大学病院の総合診療であるかと思います。もちろん、その施設に求められるニーズに応じて、外来診療に留まらず、病棟診療を合わせて持つ施設もあります。
ほかの型にはどういったものがありますか?
小~中規模病院での総合診療は、各科専門医の十分な数を確保できている病院ばかりではないのが現状だと思います。そういった状況で力を発揮するのが病院総合医かと思います。「初療のみならず、ある程度は自分のところで治療まで完結しよう」という気概で診療に当たっているかと思います。病院総合医が、各スペシャリティーのcommon diseaseを担当することで、各科専門医はより高度な専門性の高い疾患に集中できるというメリットがあります。例えば、肺炎は病院総合医、肺癌は呼吸器内科、脳卒中は病院総合医、変性疾患は神経内科医が担当するような型です。診療に難渋する症例は、高次機能病院に送る必要はでてくるかと思いますが、病院総合診療の一つの完成型かと思います。
旭中央病院の総合診療はどうような診療科ですか?
地方にある基幹病院であるため、救急外来からの入院が多く、主に感染症、敗血症性ショック、糖尿病合併症、電解質異常・内分泌疾患、脳梗塞を含む血管障害、てんかん、意識障害、肺炎、COPD、間質性肺炎などの呼吸器疾患、高齢者の心不全・消化器疾患、不明熱、血管炎、低体温、熱中症、いくつかの専門科にまたがる複数の疾患をもつ患者、緩和ケアが必要な患者、内科管理が必要な他科患者など多彩な疾患を担当しています。また、総合診療科としての外来診療を行っており、初診外来だけでなく、継続外来も併設しているため当科は振り分けを主とした問題転嫁型総合診療ではなく、問題解決型の総合診療が可能となっています。また、訪問看護にも中心的役割を果たしており、外来、病棟、救急、訪問診療を通して地域全体を見る病院総合診療を行っています。大学病院の外来型の総合診療部門に小~中規模病院の訪問・入院診療が合わさった型で、かつ大学病院のように診断困難症例も自分のところで最後まで見切るような体制となっています。多くの大規模病院の病院総合診療はこのような型をとっているのではないでしょうか。
他科と協力するのはむずかしいですか?
当院では上記のように立ち位置を病院全体が理解していただいているため、やりにくさはほとんどないです。また、特に内科各科との合同カンファレンスがいくつかあり、各科部長とも20年以上苦楽を共にしている先生が多いので、垣根が低く早めの声掛けができ、困ったときも喜んで(笑)助けてくれます。創設して11年になりますが、うまく役割分担ができているように思います。ただ、病院総合診療の立ち位置を病院全体に理解していただくのに実績とある程度の時間が必要かもしれません。
どのようにして若い先生方のモチベーションを高めているのですか?
総合診療は守備範囲が広いので、自分がどこまでできているのかわかりにくい場合があります。しっかり診断し、自分たちでできるかぎりの治療まで行っていく問題解決型の総合診療を体感してもらうことだと思います。時に、診断困難例を解き明かす姿をみせることで「ときめき」を感じてもらうことも必要ですが・・(笑)