慶應義塾大学アントレプレナー育成コース
慶應義塾大学ではアントレプレナーの育成を始められると伺いました。
前回、オープンイノベーションへの流れは劇薬だと申し上げましたが、やはりそちら側をする人も必要なので、慶應義塾大学では大学院医学研究科の修士課程にアントレプレナー育成コースを設置しました。慶應義塾大学の良いところは総合大学であるところなので、SFCの環境情報学部の先生方やビジネススクールの経営管理研究科の先生方にも教育をお手伝いいただき、医療系のアントレプレナーを育成します。2021年春の入学者からスタートするのですが、誰も応募してこなかったらどうしようと不安になっていたら、色々な企業の方や社会人の方から応募がありました。
注目されているのですね。
そうなんです。東京都の職員も応募していて、オリンピックが終わったらこちらに力を入れたいと言っていました。これで経済活性化に繋がればと思っていますが、私たちはこればかりをしているわけにはいきません。
基礎研究も大事ですね。
アントレプレナーで言えば、東京大学もすごいですよね。本郷あたりのビルには東大発のベンチャー企業が色々と入っています。昔の東大生とはイメージが違いますよ。まあ、あのホリエモンだって、東大ですしね(笑)。世界的にも同様で、スタンフォード大学だけでなく、ハーバード大学やMITでもそうみたいです。若い人たちのモチベーションはそういうところで支えられているのでしょう。昔の知的好奇心みたいなものはないのかもしれませんが、それはそれで研究が進めばと思っています。
昨今の臨床の現場についてはどのようにご覧になっていますか。
色々なことが混乱しているので、もう少し健全化してほしいです。新専門医制度や働き方改革など、とにかく現場は混乱しています。病院のマネジメントは非常に難しい状況にあります。
公的病院の統廃合の問題もあります。
患者さんのことを考えていない発想ですよね。中長期的なビジョンも感じられません。一方で、医師不足ですし、国から増やせと言われても無理な話です。
これからは開業することも難しくなるようです。
そういう話を聞くと、優秀な人が医学部に来なくなりますし、それは良くないです。そうすると、医学の知識を活用して色々なことで生きていくことが大事だということになり、ではベンチャーかという話になります。しかし、ベンチャーばかりになるのも困りますしね。私はそちらを推進する側でもありますが、それは大学自体を強くしたいためです。国際的に戦える大学になるためには資金力が必要ですし、それをつけるために考えていることの一つにすぎません。我々としては学生や若い人たちのモチベーションを保ち、さらに上げていかなくてはいけないと思っています。