第5回
医療機器のこれから&若手医師に伝えたいこと(1/2)
医療機器の開発
― 医療機器はさらに進化しますね。
- 福永
- より高精細になって、解像度が良くなります。色々な血管や筋肉には名前がついているんです。でも、それはある一定の太さのところしか、ついていないんですね。今はそのバリエーションしか明らかにされていないんですが、腹腔鏡手術を若手に教えるときはもっと細かくて、名前のついていない血管も伝えているんです。
― 細かい血管にも名前がつくようになっていくんですか。
- 福永
- 名前を勝手につけて、そのバリエーションを若手に解説している施設もありますよ。
- 古閑
- バリエーションを知ることは安全という意味で、とても大切だと思う。
- 福永
- 出血させずに手術することに繋がるしね。
- 古閑
- 哲は開腹手術なら輸血の準備をするでしょう?でも腹腔鏡手術なら準備しないよね。
- 福永
- しないね。
- 古閑
- 僕たちも背骨の手術で輸血を2リットル準備した時代もあったけど、内視鏡手術になってからは必要ない。これは大きな違いだと思う。
- 福永
- 今は拡大するから、昔は気づかずに切っていた血管も見えるようになった。腹腔鏡手術の場合は二酸化炭素で圧をかけているので、出血しにくいということもあるけど。
― そういった機器の開発にも携わっていらっしゃるのですか。
- 福永
- これまでメーカーと一緒に多くの機器を開発してきました。カメラのシステム、ものを切ったり、止血したりするデバイス、鉗子類などですね。今も開発中のものがあります。詳しいことはまだ言えないのですが(笑)。メーカーには技術者がいて、ドライラボで実験をします。さらにウェットラボでの動物実験ですね。齧歯目の動物を使って実験をし、改良していきます。自分の手技により適した機器を開発するのはとても面白い仕事です。逆に、いい機器ができれば、新しい手技も出てきますしね。
カダバートレーニング
- 古閑
- 腹腔鏡手術のトレーニングではカダバーを使えるの?
- 福永
- 使える。海外は進んでいるけど、日本は少し遅れているね。
- 古閑
- カダバートレーニングという、死体を使うトレーニングがあります。日本は遅れているけど、僕たちも若手医師を海外に連れていって、教育しているんです。
- 福永
- 海外はカダバーが進んでいるけど、日本は動物でのトレーニングが多いね。でも動物愛護や倫理的な問題がある。
- 古閑
- 死体を膨らませられるの?
- 福永
- 今は死体保存システムがかなり良くなってきたからね。昔はカチコチに冷凍してあって、それが解けてくると臭いがしてくることもあった。
― やはり動物とは違うものですか。
- 古閑
- アナトミーが違いますね。
- 福永
- 胃がんの手術トレーニングでは動物だと若いブタを使うことが多い。結構、難しいので、いいトレーニングになる。講習会でも何十回と講義してきた。日本内視鏡外科学会でもきちんとトレーニングをさせている。
- 古閑
- 僕たちの学会もトレーニングしている。
若手医師へのメッセージ
― では後進の医師に向けて、メッセージをお願いします。
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プロフィール
福永 哲(ふくなが てつ)
順天堂大学医学部
消化器・低侵襲外科 教授
【略歴】
- 1962年
- 鹿児島県奄美市生まれ。
- 1988年
- 琉球大学を卒業
順天堂大学医学部附属順天堂医院外科で研修を行う。 - 1992年
- 順天堂大学医学部附属浦安病院外科勤務(助手)。
- 1994年
- 米国ピッツバーグ大学 麻酔・集中治療部に留学(リサーチフェロー)。
- 1996年
- 順天堂大学医学部附属浦安病院 勤務。
- 2004年
- 癌研究会附属病院消化器外科 勤務。
- 2007年
- がん研有明病院消化器外科 勤務する。
- 2008年
- 徳島大学医学部臓器病態外科学臨床教授
- 2009年
- 聖マリアンナ医科大学消化器・一般外科臨床教授 併任。
- 2010年
- 聖マリアンナ医科大学消化器・一般外科教授 就任。
- 2015年
- 順天堂大学医学部附属順天堂医院消化器・低侵襲外科教授 就任。
聖マリアンナ医科大学消化器・一般外科客員教授 就任。
【資格・所属学会】
日本外科学会指導医・専門医
日本消化器外科学会指導医・専門医
日本内視鏡外科学会技術認定医
日本がん治療認定医など。
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プロフィール
古閑 比佐志(こが ひさし)
岩井整形外科内科病院
副院長/教育研修部長
【略歴】
- 1962年
- 千葉県船橋市生まれ。
- 1988年
- 琉球大学卒業。琉球大学医学部附属病院で研修。
- 1988年
- 9月に沖縄赤十字病院
琉球大学医学部脳神経外科研究生 - 1989年
- 琉球大学医学部脳神経外科助手
- 1990年
- 沖縄県立八重山病院脳神経外科
- 1991年
- 琉球大学医学部附属病院脳神経外科
- 1992年
- 新潟大学脳研究所神経病理学講座に特別研修生として出向
- 1994年
- 北上中央病院脳神経外科
琉球大学医学部附属病院 - 1995年
- 豊見城中央病院脳神経外科
熊本大学大学院研究生
小阪脳神経外科病院脳神経外科 勤務 - 1998年
- Heinrich-Pette-Institut fur Experimentelle Virologie und Immunologie an der Dept. of Tumorvirologyに留学
- 2000年
- ヘリックス研究所第3研究部門主任研究員
新潟大学医学部脳研究所非常勤講師 - 2001年
- 湘南鎌倉総合病院脳卒中診療科 勤務
かずさDNA研究所主任研究員 - 2005年
- かずさDNA研究所地域結集型プロジェクト研究チームリーダー
- 2006年
- かずさDNA研究所ゲノム医学研究室室長
- 2008年
- 千葉大学大学院分子病態解析学非常勤講師
- 2009年
- 岩井整形外科内科病院 脊椎内視鏡医長
- 2012年
- 中国福建省厦門の漳州正興医院で微創脊椎外科主任医師
- 2014年
- 岩井整形外科内科病院教育研修部長
- 2015年
- 岩井整形外科内科病院副院長
【資格・所属学会】
日本脳神経外科学会専門医
日本脊髄外科学会
内視鏡脊髄神経外科研究会
日本整形外科学会
CONTENTS(全5回)
- 第1回 琉球大学同期生のふたりが卒後に選んだ道
- 第2回 新専門医制度が立ち遅れている理由
- 第3回 若い世代への教育&腹腔鏡手術が目指す場所
- 第4回 女性医師は内視鏡に向いている
- 第5回 医療機器のこれから&若手医師に伝えたいこと
トップドクター対談 バックナンバー
- 第4回
トップドクター対談
Dr.古閑比佐志×Dr.佐々木治一郎 - 第3回
内視鏡外科トップドクター 師弟対談
Dr.金平永二×Dr.稲木紀幸 - 第2回
内視鏡外科・総合内科トップドクター対談
Dr.古閑比佐志×Dr.徳田安春 - 第1回
内視鏡外科トップドクター 同級生対談
Dr.福永哲×Dr.古閑比佐志