コラム・連載

2021.07.15|text by 高須 克弥

シーズン3 第4回 フェイスシールド

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フェイスシールド

最近はどのような社会貢献をなさっていますか。

一番一生懸命やっているのは新型コロナウイルス対策です。このワクチンがなかなか手に入らないというのが社会問題になっていますが、愛知県に入ってきたら、すぐに取り組みます。このワクチンを打つ権利があるのはまず医療従事者、次に高齢者、そして病気持ちなので、私は3つ揃っているトリプル役満なんです(笑)。それで「どうしますか」と言われたから、「辞退して、次の人に譲ります」と言いました。このワクチンは冷凍保存しないといけないから、余ったものが出たら、自分で打ちます。苦労して手に入れたワクチンを無駄にするのは嫌ですし、私が辞退したものではなく、廃棄するものが出たら、自分の身体に打ちます。それだけのことです。まともに入ってきたものは最後の順番でいいんです。「医師だから先に打て」「老人だから先に打て」「病気持ちだから先に打て」と言って、先に打って、救える命が一つでも失われたらもったいないですよ。そんなにしてまで生きたいのかと言われることがすごく悔しいです。

高須グループの医療施設には感染者がまだ出ていないんですよね。

そうです。これからの予防のために打つのだから、私自身がグループ内に移さないように気をつけているのに、最初に私が打つのは筋が通りません。現実的には現場で働いている人が感染するリスクが高いので、そういう人から打つべきです。私は感染する確率がとても低いんです。高須病院でも面会を完全に遮断している状態での病棟回診を行っています。高須クリニックでは入口で全員を検温し、私が診察するときにはマスクをして、フェイスシールドをつけていますので、感染しようがありません。

先生のフェイスシールドには「高須クリニック」のロゴも入っているんですね。

このフェイスシールドは私が広めたんですよ。皆が「マスクがない」と言って、マスク不足が社会問題になっているときに、ドクター中松がこのフェイスシールドを発明したんです。それで最初に私にくれたんですよ。そして、これをつけて、すぐに「ワイドナショー」に出たんです。50人分ぐらい持っていって、その場で皆に分けてあげたら、笑い者にされましたよ。松本人志さんも指原莉乃さんも笑っていましたが、指原さんは「マスクがちょうどなくなったから、これをマスク代わりにするわ」と持っていきました。

笑いが出たんですね。

「こんなものでウイルスを防げるわけがない」と言われました。「フェイスシールドの横からウイルスが入ってくるんじゃないか」と聞かれましたが、ドクター中松の話だと、フェイスシールドの内側は空気が熱せられ、その熱い空気は外に出るので、外からウイルスが入ることはないそうです。ドクター中松は医師ではありませんが、彼が恐れていたのは粘膜からの感染です。口蓋から感染するのであれば、眼瞼結膜はどうなるのか、目が一番危ないのではということでした。私も同感し、色々なところでゴーグルがいいと言ってまわったのですが、さんざん馬鹿にされました。

今はフェイスシールドも当たり前になりましたね。

私が最初に「これがいい」と言ったことを皆が忘れているんです。悔しいですね。日本で一番にこれをつけたのはドクター中松で、2番目が私です。ドクター中松が作ったものを私が広めました。

ドクター中松とお知り合いだったのですね。

ドクター中松は私より1世代上で、戦争を経験している人です。私は終戦の年に生まれましたので、ちょうど1世代違います。そのドクター中松がフェイスシールドを持ってきてくれたから、私としては宣伝してあげるつもりで、フジテレビに持っていき、「ワイドナショー」に出ました。オンエアしてくれたのは良かったのですが、まだ皆はマスク、マスクと言っているんです。私だけ「マスクよりもフェイスシールドだ」と言っていましたが、今は皆がようやくつけています。公的な医療機関ではフェイスシールドとマスクがセットになっています。

先生がおっしゃったことは早すぎたのでしょうか。

遅すぎたくらいです。皆がもっと早く分かっていたら、こんなに感染が広まることはありませんでした。私は「これからえらいことになるから、外国からの侵入を止めないといけない、鎖国しろ」と大騒ぎしていたのに、皆に聞いてもらえなかったんです。これは日本の歴史が辿ってきたことです。日本では昔から疫病が流行ると国を閉ざし、大仏様を建立して、隣の村の人間すら入れないようにして、皆で自分たちのテリトリーを守って生き延びてきました。日本は過去に何度も疫病が流行っていたのに、そういう歴史も皆が忘れています。

確かに、新型コロナウイルスが初めての疫病ではありませんね。

日本の神事は医師がしていることと同じです。靖国神社にしろ、どの神社にしろ、神社に行って、最初にすることは手洗いとうがいですよね。そして神様の前ではほかの人とは離れて柏手を打ちます。人とくっつかないのは穢れるからです。神道の国の我々はキリスト教の国の人のように色々なところにやたらと接吻なんてしないんです(笑)。医師になったら、患者さんから神の遣いかのように思われ、「お医者様に伺ってみましょう」と言われますが、患者さんもお医者様に聞く前に昔からの常識的な知識を大事にしたらいいんですよ。たかだか医学部の6年で国家試験のための勉強をしてきた人たちの話を聞くよりもお年寄りの生活の知恵を聞いた方が余程、日本を守れます。

昔や歴史に習うのは大切なのですね。

今が徳川幕府の世の中なら、絶対に新型コロナウイルスは流行りません(笑)。徳川幕府では鎖国に加えて、「入り鉄砲に出女」といって、関所で厳しい監視があったからです。関所では変な人が入ってこないように、きちんとせき止めていました。黒船が来たあとも、孝明天皇様は「異人は穢れているから打ち払え」とご指示なさって、鎖国を続けていました。あれで正解だったんですよ。外国の方たちのことを異人といいますが、英語では「alien」ですよね。違う種族のことなんです。アメリカのインディアンも、南米の原住民も違う種族が入ってきたことで、滅ぼされてしまいました。これは疫病と同じことだと思います。

著者プロフィール

高須克弥院長 近影

著者名:高須 克弥

高須クリニック 院長

  • 1945年 愛知県幡豆郡一色町(現 西尾市)で生まれる。
  • 1969年 昭和大学を卒業する。
  • 1973年 昭和大学大学院を修了する。
  • 1974年 愛知県幡豆郡一色町に高須病院を開設する。
  • 1976年 愛知県名古屋市に高須クリニックを開設する。
  • 2011年 昭和大学医学部形成外科学(美容外科学部門)客員教授に就任する。
バックナンバー
  1. インタビュー 高須克弥先生に訊け
  2. 25. 2022年の再生プロジェクト
  3. 24. 前科者の会
  4. 23. 高須クリニック銀座移転
  5. 22. GonzoさんとのCM撮影
  6. 21. 新型コロナウイルス第6波
  7. 20. 再生プロジェクト
  8. 19. がんを治療する
  9. 18. がんを発見する
  10. 17. 末期がんに対する挑戦的治療法
  11. 16. 新型コロナウイルス第5波
  12. 15. 本物と偽物
  13. 14. フェイスシールド
  14. 13. 医師国家試験
  15. 12. 昭和大学での日々
  16. 11. 東京オリンピック
  17. 10. ウィズコロナの時代に
  18. 09. 最近の美容外科に警鐘を鳴らす
  19. 08. 社会貢献活動
  20. 07. 愛知県に暮らす
  21. 06. 新型コロナウイルス
  22. 05. 新しい美容外科
  23. 04. ミケランジェロ™
  24. 03. 国際交流
  25. 02. 血液クレンジング
  26. 01. 美容外科のニーズ

 

  • Dr.井原 裕 精神科医とは、病気ではなく人間を診るもの 井原 裕Dr. 獨協医科大学越谷病院 こころの診療科教授
  • Dr.木下 平 がん専門病院での研修の奨め 木下 平Dr. 愛知県がんセンター 総長
  • Dr.武田憲夫 医学研究のすすめ 武田 憲夫Dr. 鶴岡市立湯田川温泉リハビリテーション病院 院長
  • Dr.一瀬幸人 私の研究 一瀬 幸人Dr. 国立病院機構 九州がんセンター 臨床研究センター長
  • Dr.菊池臣一 次代を担う君達へ 菊池 臣一Dr. 福島県立医科大学 前理事長兼学長
  • Dr.安藤正明 若い医師へ向けたメッセージ 安藤 正明Dr. 倉敷成人病センター 副院長・内視鏡手術センター長
  • 技術の伝承-大木永二Dr
  • 技術の伝承-赤星隆幸Dr