コラム・連載
シーズン4 第5回 再生プロジェクト
2021年7月に退院され、8月に再生プロジェクトをされましたね。
元気そうになったでしょう。この取材のあとも時間があれば、眉毛のところをもう少し上げようとも思っていたのですが、手術の制限もしているんです。大学病院なども不要不急の手術をしていませんし、がん治療でもトリアージが行われていますので、私どももそれに準じています。
再生プロジェクトでどのようなことをなさったのか、教えてください。
がん治療で機嫌の悪い顔になったので、これを再生しようというプロジェクトです。人間の身体は車と同じで、足回りが弱って、エンジンや電気系統が壊れると、いずれはスクラップされます。足回りやエンジンを直すことはなかなか大変ですが、幸いなことに古い中古車でも割と決まった手順を踏めば、ぴかぴかのヴィンテージカーに戻すことができるんです。同様に、私自身が行うヴィンテージカー修復過程がこの再生プロジェクトです。まずは下がっている眉を持ち上げるブローリフトを行いました。
ブローリフトとはどのようなものですか。
下がった眉毛をどのぐらい上げるのか、まず自分でデザインしました。そして、高須クリニックの並木保憲医師に眉毛の上の部分を切除し、上瞼を引き上げて縫合する手術をしていただいたところ、上瞼のたるみが改善しました。
目がぱっちりなさって、若返られましたね。
それから鼻の下を短くする人中短縮術を受けました。これは鼻と唇の境目の皮膚を切除して縫い合わせるものです。上口唇が引き上がるため、鼻の下が短くなります。1週間後には口笛も吹けるようになりました。鼻の下が伸びていると、口笛が吹けないんです。
その後、フルフェイスリフトもなさったんですよね。
これは大がかりな手術で、21年前にしたものと同じものです。折角のチャンスですので、最後に一花咲かせる意味で行いました。同時にボトックスを打って、しわを伸ばすことや高周波をかけることも検討しましたが、これらは根本的な治療ではないですし、機会を改めることにしました。フルフェイスリフトでは麻酔クリームを塗って、麻酔を打ちます。血圧もチェックしながら行いますが、血圧が上がることもなかったです。この手術も並木医師が担当してくれました。こめかみ、耳の前、耳の後ろ、襟首の髪の毛の生え際にかけて皮膚を切開し、余分な皮膚を切除します。その後、皮膚を丁寧に縫合していきます。そうすると、こめかみが持ち上がって、首が引っ張りあげられ、しゅっとしたうりざね顔になります。顔全体から首にかけてのたるみが改善されたことで、とりあえず「仕立て直し」ができました。
痛みなどはありませんでしたか。
手術は全く痛くなかったです。手術後は痛みがありましたが、ロキソニン1錠で用が足りました。手術後にテープを剥がすときが辛かったぐらいですね。血液が溜まらないようにするため、ドレーンをつけていたのですが、翌日に外しました。1週間後には腫れも引きました。効果としては下がった眉毛が上がり、目の開きが良くなったこと、顔全体のたるみを引き上げたことです。しかし、これには高い技術が必要なので、後悔しないようなクリニック選びが大切だと思います。並木医師は縫い方が上手なので、傷の治りが良いです。
しわも取られたのですね。
これは高須式で、眉間、目尻、目の下、ほうれい線、額などに注射をするものです。人や場所に応じて、膨らませた方が良いとか、筋肉の動きを止めた方が良いとか、皮膚に張りを持たせた方が良いとか、カクテルのように薬を組み合わせていきます。その組み合わせを色々とやってみました。これは簡単ですよ。自分で打つ注射ほど、痛くないものはありません。注射のうまい下手には大きな違いがありますが、私は自分の注射が一番うまいと信じています。
ボディの方はいかがですか。
ボディはテスラフォーマーを使いました。これは特殊なFMSテクノロジーを使用して筋肉を強化するために開発されたものです。EMSが表面の筋肉を刺激するのに対し、FMSは深い筋肉組織を刺激することが可能です。テスラフォーマーの治療可能部位は二の腕、お腹、臀部、前腿、後腿で、尿道を締めるほか、坐骨神経痛や腰痛にも効果があります。これで、筋肉もかなり戻りましたよ。
歯も再生されたのですね。
がん治療で取れてしまった前歯を新しくしました。全部がプラスチックだと黄色くなってしまうので、できるだけセラミックを混ぜることで色が変わりにくい歯を作ってもらいました。仕上がりもとても気に入っています。笑顔が映えるようになりました。
がんの患者さんへのメッセージ
がん治療をされている方々にメッセージをお願いします。
がんはすぐに死なないので、割とラッキーな病気です。色々な治療法がありますし、準備もできます。不自由になる部分も確かにありますが、ほとんどの病気がそうなのです。最悪の場合は寿命が短くなるだけのことですよ。高齢者は寿命が短いのですから、むしろ高齢者にはがんはラッキーなのです。がんの患者さんは「伝染るから寄るな」と言われたり、家族が寄ってこないということがありません。何か面倒なことが起きても忌み嫌われることなく、「がんなら仕方ありませんね」と言ってもらえる病気なのです。病気になるなら、がんですよ。
著者プロフィール
著者名:高須 克弥
高須クリニック 院長
- 1945年 愛知県幡豆郡一色町(現 西尾市)で生まれる。
- 1969年 昭和大学を卒業する。
- 1973年 昭和大学大学院を修了する。
- 1974年 愛知県幡豆郡一色町に高須病院を開設する。
- 1976年 愛知県名古屋市に高須クリニックを開設する。
- 2011年 昭和大学医学部形成外科学(美容外科学部門)客員教授に就任する。
- インタビュー 高須克弥先生に訊け
- 25. 2022年の再生プロジェクト
- 24. 前科者の会
- 23. 高須クリニック銀座移転
- 22. GonzoさんとのCM撮影
- 21. 新型コロナウイルス第6波
- 20. 再生プロジェクト
- 19. がんを治療する
- 18. がんを発見する
- 17. 末期がんに対する挑戦的治療法
- 16. 新型コロナウイルス第5波
- 15. 本物と偽物
- 14. フェイスシールド
- 13. 医師国家試験
- 12. 昭和大学での日々
- 11. 東京オリンピック
- 10. ウィズコロナの時代に
- 09. 最近の美容外科に警鐘を鳴らす
- 08. 社会貢献活動
- 07. 愛知県に暮らす
- 06. 新型コロナウイルス
- 05. 新しい美容外科
- 04. ミケランジェロ™
- 03. 国際交流
- 02. 血液クレンジング
- 01. 美容外科のニーズ
- 精神科医とは、病気ではなく人間を診るもの 井原 裕Dr. 獨協医科大学越谷病院 こころの診療科教授
- がん専門病院での研修の奨め 木下 平Dr. 愛知県がんセンター 総長
- 医学研究のすすめ 武田 憲夫Dr. 鶴岡市立湯田川温泉リハビリテーション病院 院長
- 私の研究 一瀬 幸人Dr. 国立病院機構 九州がんセンター 臨床研究センター長
- 次代を担う君達へ 菊池 臣一Dr. 福島県立医科大学 前理事長兼学長
- 若い医師へ向けたメッセージ 安藤 正明Dr. 倉敷成人病センター 副院長・内視鏡手術センター長