コラム・連載
シーズン4 第4回 がんを治療する
これまで何回の手術をされたのですか。
泌尿器科や外科などで8回ほどでしょうか。友人の話を聞いたり、参考にしたりしながら治療をしています。
まず、初期の頃に受けられたBCG注入治療法とはどのようなものですか。
BCG注入治療法自体は新しいものではありません。大正か昭和初期の頃に、BCGをがん細胞に注入するとがんが消えるのではないかという発見があったんです。実際に肺がんや胃がんにやってみたりして、色々と失敗した中で、唯一成功したのが膀胱がんでした。そして、この治療法は有効だということで、健康保険が認められています。BCG注入治療法は丸山ワクチンよりも古い歴史を持っていますから、温故知新ですね。最近、『Lancet』に出た論文で、BCG抵抗型のがんに使える新しい薬が発表されたのですが、まだ誰も治験をしていないので、次に何かするときにはこれをしようと思っています。
色々な治療法を次々に見つけられるのですね。
大学の教授や経験者の方たちが見つけてきてくれるんですよ。
昭和大学に機械の寄付もされたそうですね。
高周波でがんを取り除くための最新式の治療機材を購入して、昭和大学に寄付し、その治療を受けました。私は美容外科でも全て自分が実験台となってきました。高須クリニックを開業してから、自分が実験台となった治療法は300以上あります。その結果、メスで切らない二重まぶた埋没法や日本人向けの脂肪吸引術を生み出してきたのです。がん治療も私が実験台になりたいと思い、標準治療でないものにも積極的に取り組んできました。自分の身体であれば、誰からも非難されませんし、うまくいけば誰かの役に立つことができ、失敗しても、その後の教材になります。
免疫治療も受けられましたね。
がんを攻撃する免疫細胞であるナチュラルキラー細胞を人工透析の装置を使って、自分の血液から選択的に採り出して培養し、活性化させて再び体内に戻すという治療法です。全身麻酔したので、なかなか大変な治療法でした。従来の方法は300ccや400ccといった少ない量の血液を採り出していたのですが、私は透析のように、全血を一遍に採り出し、全てを循環させたうえで戻したんです。一回の治療に6週間かかり、これを5クールぐらい行いました。しかし、あまり効きませんでしたね。
治療中はきつかったですか。
すごくきつかったです。倦怠感というよりも、軽いショックを起こしたような状態なんです。血圧も下がりますし、寒気もしました。自分のナチュラルキラー細胞であっても、身体が異物を認識するんでしょうね。
もうなさっていないですよね。
飽きたから止めて、ほかの治療に変えました。
2020年には悪性腫瘍蛍光物質投与下経尿道内視鏡膀胱悪性腫瘍切除手術を受けられましたが、これはどのような手術でしたか。
アラグリオという物質を投与すると、がん細胞が蛍光で光るのです。そこで光っているところを見つけ、手術するというものです。紫外線に当たるとトラブルが起きるので、暗闇で手術します。ただ、LEDの明るさなら大丈夫だと分かったので、スマホでTwitterをすることはできました。しかし、膀胱がんの手術をこれで行ったものの、うまくいきませんでした。目視したがんは全部取りきったはずなのに、がん細胞がどこかにあることが分かったので、次の治療になったわけです。目に見えないところにないのだとすると、膀胱ではないところにあるのでしょう。膀胱の中は全て見えますからね。膀胱に出てきているがんは違うところから出てきているのだと思います。出てくるとすれば、反対側の尿管か腎臓ではないでしょうか。
これまでの治療の中で、分子標的治療薬は使われなかったのですか。
私の今のがんにぴったりの分子標的治療薬がないんです。今後、いいものが見つかるかもしれませんが、今は使っていません。
著者プロフィール
著者名:高須 克弥
高須クリニック 院長
- 1945年 愛知県幡豆郡一色町(現 西尾市)で生まれる。
- 1969年 昭和大学を卒業する。
- 1973年 昭和大学大学院を修了する。
- 1974年 愛知県幡豆郡一色町に高須病院を開設する。
- 1976年 愛知県名古屋市に高須クリニックを開設する。
- 2011年 昭和大学医学部形成外科学(美容外科学部門)客員教授に就任する。
- インタビュー 高須克弥先生に訊け
- 25. 2022年の再生プロジェクト
- 24. 前科者の会
- 23. 高須クリニック銀座移転
- 22. GonzoさんとのCM撮影
- 21. 新型コロナウイルス第6波
- 20. 再生プロジェクト
- 19. がんを治療する
- 18. がんを発見する
- 17. 末期がんに対する挑戦的治療法
- 16. 新型コロナウイルス第5波
- 15. 本物と偽物
- 14. フェイスシールド
- 13. 医師国家試験
- 12. 昭和大学での日々
- 11. 東京オリンピック
- 10. ウィズコロナの時代に
- 09. 最近の美容外科に警鐘を鳴らす
- 08. 社会貢献活動
- 07. 愛知県に暮らす
- 06. 新型コロナウイルス
- 05. 新しい美容外科
- 04. ミケランジェロ™
- 03. 国際交流
- 02. 血液クレンジング
- 01. 美容外科のニーズ
- 精神科医とは、病気ではなく人間を診るもの 井原 裕Dr. 獨協医科大学越谷病院 こころの診療科教授
- がん専門病院での研修の奨め 木下 平Dr. 愛知県がんセンター 総長
- 医学研究のすすめ 武田 憲夫Dr. 鶴岡市立湯田川温泉リハビリテーション病院 院長
- 私の研究 一瀬 幸人Dr. 国立病院機構 九州がんセンター 臨床研究センター長
- 次代を担う君達へ 菊池 臣一Dr. 福島県立医科大学 前理事長兼学長
- 若い医師へ向けたメッセージ 安藤 正明Dr. 倉敷成人病センター 副院長・内視鏡手術センター長