“なぜ中国株投資を勧めるのか?”
それは日本の投資家による国際分散投資で、中国株が有望な選択肢の一つだからだ。
“なぜ国際分散投資が必要なのか?”
“日本株投資だけでは、ダメなのか?”
そうした疑問に対しては、「資産運用を実践するうえで、日本という枠組みの限界を越えるため」と、いつも答えている。
日本の銀行預金は
利息が少ない
分かりやすく、ノーリスクの資産運用手段である銀行預金を例に挙げよう。2023年6月8日に調べたところ、日本の大手銀行では、期間1年の定期預金金利が0.002%だった。
1000万円を預けたところで、1年間の利息は、税引き前でも、たったの年間200円。さらに税金が引かれ、雀の涙となる。
同じ日に中国本土の大手銀行は預金金利を引き下げたが、最大手の中国工商銀行では、期間1年の定期預金金利として1.65%を提示している。
中国本土の利息は
日本の825倍
1.65%の金利だと、1000万円を預金で、年間16万5000円の利息が得られる。日本で得られる利子所得の825倍であり、海外旅行や家電購入も可能な金額だ。しかも、中国では預金利息が非課税。なんともうらやましい話だ。
逆に日本の銀行に預金して、年間16万5000円の利子を得るには、82億5000万円が必要。1000万円の預金なら、日本のサラリーマン世帯でも可能かもしれないが、82億5000万円の預金は、宝くじに当選したとしても無理だろう。
日本中の銀行をいくら探しても、中国工商銀行のような預金金利を提示するところは、どこにもない。これが日本という枠組みの限界だ。
投資先は日本だけではない しかし、そうした限界を越え、世界に目を向ければ、中国工商銀行のように、日本よりも高い預金金利を提供する銀行もある。こうした事実を知れば、投資家として世界に目を向けること、すなわち国際分散投資の魅力や重要性が、ご理解いただけるだろう。
ただ、残念なことに、日本で暮らす人は、中国で銀行口座を開設することはできない。ノーリスクで1.65%の利息は魅力的だが、日本にいながら中国で預金することは不可能だ。
では、リスクのある株式投資だったら、どうだろう。中国工商銀行に預金できないが、その株式を買うのは、日本からでも可能だ。
中国工商銀行は香港に上場している。2023年6月7日の終値は4.3香港ドル。2023年7月6日に権利落ちを迎える配当は、1株あたり0.3035人民元であり、1人民元=1.1香港ドルで計算すると、約0.33385香港ドル。配当利回りは約7.8%となる。
なお、日本最大手の三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は、6月7日の終値が957.5円であり、2024年3月期の予想配当金は年間41円。これに基づく予想配当利回りは約4.3%だった。
配当金には税金がかかる
ちなみに2014年今年の漢字は「税」
配当金は課税対象だ。日本株の配当では20.315%の税金が徴収される。税金を引くと、MUFGの配当利回りは約3.4%となる。
一方、中国工商銀行の配当金の場合、中国で10%が源泉徴収され、その残りに対して日本でさらに20.315%の税金が引かれる。
その結果、日中両国で徴収される税金は、配当金の約28.28%に達する。
だが、日中両国の税金を抜いたとしても、中国工商銀行の配当利回りは約5.6%だ。同じ最大手の銀行への株式投資でも、日本株と中国株では、税引き後でも2%以上も差がある。
“配当利回りが高いのは分かるが、中国工商銀行なんて聞いたことがない。不安だ!”
中国工商銀行(ICBC)は世界最大の銀行
実質的な筆頭株主は中国政府
そんな疑問には、こう答えよう。中国工商銀行は英誌「ザ・バンカー」の“世界の銀行トップ1000”で、直近の2022年度版まで10年連続の世界1位。順位の基準となる中核的自己資本(Tier1)だけではなく、総資産と税引き前利益でも世界トップだ。中国の銀行最大手は、世界の銀行最大手でもある。
そのうえ、筆頭株主はソブリン・ウエルス・ファンド(SWF)のCIC(中国投資)であり、中国の財政部(財政省)も主要株主として名を連ねるなど、中国政府の後ろ盾もある。
一方、日本最大のMUFGは2022年度版で世界12位であり、前年度の10位から順位を2つ落とした。このランキングの1990年度版では、日本の銀行がトップ10内に6行も名を連ねていた。うちトップ3は、すべて日本の銀行だった。しかし、2022年度版ではトップ10内に日本の銀行はいない。
いまだバブル期の日本のイメージから脱しきれない人がいるかも知れないが、この30年あまりで世界の金融業界は激変した。日本にはないチャンスもあり、それが国際分散投資の魅力だ。
さあ、世界に目を向けましょう!