医者が知らない医療の話
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第38回

COVID-19の「集団免疫」

《 2020.11.10 》

 最近はワイドショーでの新型コロナニュースが減って、世間と言うかマスコミも関心が少し薄れてきた様ですね。マスクの着用で多少揉めてるみたいだけど。マスクに関しても、ほとんど「エチケット」の範疇で、医学的にどうこう言っても、もはやあまり意味がない様な気がする。マスクめんどくさい派の私だって、電車乗る時はマスクしますよ。大阪ではあまり電車に乗らないけど、東京は基本、地下鉄移動だから。東京のタクシーは時間掛かるし、なんと言っても道を知らない。客にどの道で行くか尋ねてくる。「一番早いので!」ひどいのになると乗った途端に「私、道分かりませんのでよろしくお願いします。」と来る。「漫才やってんのかおらあ!」(口には出しませんよ。大人だから。)。大阪なら後ろから蹴っ飛ばされそうな話ですよ。ほんとに。

 前置き(雑談?)が長くなったが、今回はCOVID-19収束のお話。
 ワクチンも中々上手く行ってない様だし、ヨーロッパでは再度の感染拡大で大騒ぎ。知り合いもイギリスやヨルダンから逃げ帰ってきましたよ。日本はGo to Travelなどで、人の往来が盛んになったのに、そんなにひどい状況になっていないでしょ?経済的にもう待てないと言うのもあるだろうけど。事実上解禁状態。繁華街は東京も大阪も名古屋も人でいっぱい。他の都市は知らないけど似た様なもんでしょう。

 ところで、じゃあどうなれば「収束」になるのか?これだけ世界中で流行したのだからCOVID-19はSARS(重症急性呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)の様にウイルスが流行しない程度に消えることはあり得ないだろう。多分インフルエンザウイルス同様時々流行したりして残るのだろうけど、現実的な「収束」の定義としては「感染者数が気にならないぐらい減少し、世間が騒がなくなる状態。」ではないだろうか。多分に風評的な部分が多いと思うがいかがですか?

 以前から日本はじめアジアの国で感染者や重症者が少ないのは、免疫学的な理由によると言われてきた。ここで「集団免疫」と「交差免疫」について考えてみよう。
 まず、「集団免疫」とは集団中に免疫を持っている人の割合が高ければ高いほど、免疫を持たない人が感染者と接触する可能性は低くなる。つまり集団の大部分が免疫を獲得すると感染の拡大が抑えられ、免疫を持たない人、特に免疫の弱いお年寄りや基礎疾患のある方の保護になると言う考え方。理屈は単純で分かりやすい。

 最近Lancetに集団免疫にての収束に対して否定的な提言が乗ったりして、いろいろな否定的な意見があるが、インフルエンザウイルスが原因だったスペイン風邪や香港風邪、コロナウイルスが原因だったSARSやMERSなど、過去のすべてのウイルス感染症は「集団免疫」によって収束したと言われている。特にスペイン風邪の頃なんかは医学がまだ発達していなくて、有効な治療が無かったわけだから。

 ではどのくらいの割合の人が免疫を持てば「集団免疫」が成り立つのだろうか?これは諸説あってCOVID-19の場合は、当初は人口の70%程度と考えられていたが、最近はもっと低いと考える研究者が増えている。
「50%以下」と言う意見が多い様だが、中には「10~20%」と言う意見もある。あのスウェーデンの公衆衛生庁は「40~45%」としている

 「あの」としたスウェーデンはヨーロッパ諸国で非難轟々の中、ロックダウンせず、緩やかな規制のみで、COVID-19の「集団免疫」が成立したとされているからだ。7月以降死者は減少し、9月はゼロだ。スウェーデンの「集団免疫」の効果を否定する意見もあるが、イギリスやフランスの再度のロックダウンを行わざるを得ない状況と比べれば、効果は歴然と思うのだが。

 そして、スウェーデンの規制の状況が実に日本と似ているのだ。強制的な外出規制などなく、いわゆるソーシャルディスタンスなどの自主規制によるものがほとんど。学校すら休校していない。

 確かに未知のウイルス、しかも近隣のヨーロッパ諸国が爆発的な感染に晒されている中で、ロックダウンしないと言うのは勇気のいる決断だと思う。もし収束しなければ感染者もロックダウンした国を遥かに上回りかねないのだから。非難轟々どころか周りの国をも巻き込んで国家の存亡にも関わりかねない。なんせヨーロッパは陸続きで狭いのだから。

 こんな、状況でも「集団免疫」を獲得したスウェーデンと比べて、我が日本はもっと有利な状況で「集団免疫」を獲得したのではないかと思われている。これに「交差免疫」が関係してくるのだが続きは次回。

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著者プロフィール

中川 泰一 近影Dr.中川 泰一

中川クリニック 院長

1988年関西医科大学卒業。
1995年関西医科大学大学院博士課程修了。
1995年より関西医科大学附属病院勤務などを経て2006年、ときわ病院院長就任。
2016年より現職。


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    医者が知らない医療の話
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