医者が知らない医療の話
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第82回

中国出張顛末記Ⅱ

《 2024.07.10 》

 当日は大阪発なので、関西国際空港へ。そして「深圳航空」のカウンターへ。自動チェックインなどないから座席が決まっているのに、結構並ばなければならない。中国も、北京、上海以外の都市には大概中華系の航空会社しか無い。あったとしてもコードシェアー便で、実際は中国系の航空会社だ。機体が古そう、飯がまずい、なんとなく騒がしいと三拍子揃っているが、長くても3時間、大体は2時間程度のフライトなのであまり苦にならない。まあこの辺りは中国のマイナー路線に限らず、日本の地方路線だって似たようなものだが。

 ところが、この日は台風並みの悪天気。幸い多少の遅延で済んだが、南京の空港に迎えに来てもらってたスタッフの人はかなり早めに来ていて5時間近く待ったそうな。今回の最初の目的地の安徽省の合肥(あんきしょう、ごうひ)まで南京から車で2時間。余裕を持って出たら数時間は狂うだろう。

 ところで、最近の海外って大概御招待で、空港の出口でお迎えが来てくれてて、後は車で案内されて「なすがまま」状態なので、海外旅行のリテラシーがだいぶ退化してる気がする。訪問先から、ホテル、食事まで案内されるだけで気楽だけど、自由にどっか行くわけにもいかないし。特に、今の中国はWe Chatでの支払いがほとんどで、クレジットカードや現金すら使えないところが結構あるので一人で出歩けない。これらの決済を利用するには中国国内の銀行に口座を持ってないと使えない。中国で事業でも始めれば作れるだろうが旅行者には無理だ。そのせいでもないが、中国へ来た時は全くお金を使わない。クレジットカードも含めてだ。そもそもこっちが払う場面がないのだが。余談だが、たまに欧米人のバックパッカーみたいの見かけるんだが、あの人達どうやってるのだろう?中国の人も不思議がってたよ。

 で、合肥に到着するととある会社のビルに付けられた。そこでY嬢やN博士含め皆さんお待ちかねだった。例の香港の社長は、あちらも悪天候で飛行機が飛ばず、結局深圳から新幹線で8時間かけて駆けつけてくれた。中国の人も中国の高速鉄道のこと「シンカンセン」て言ってるからもはや一般名詞化している。よく東南アジアなどでオートバイのこと「ホンダ」という様なものかな。

 まず、この香港の社長のとこの顧問のドクターとの質疑応答。マクロファージの説明をすると、「それってM2ですか?」とか訊いてくる。やっぱみんなM1, M2の分類しか頭にないようだ。「イヤイヤ、そうじゃなくって…」で納得してくれたみたいだけど、本当にわかったのかなあ?

 まあ、N博士の知り合いだそうだから、彼が納得させといてくれるだろう。彼かなり出来るので、相手の博士も言いなりに近いぐらい尊敬してるみたいだし。アレ?私が言うより説得力が有る?

 その他、その社長には、知り合いのクリニックの立て直し頼まれてて色々相談したのだが、資金はたっぷり有るし、「そんなのうちの会員100人ぐらい送れば経営成り立ちますよ。」と何とも心強い。香港から半日以上かけて来てもらっただけのことあったわ。「東京来てもらった方が楽だったんじゃ無い?」なんて無粋な事言いっこなしで。結果論ですから。

 そこで、夕食と言うより宴会に近い中国風の夕食。Y嬢の知り合いの社長の会社のビルなんだが、中国では自分の会社内に食堂なのか宴会場なのか接待用に、大きな丸テーブルがある部屋があって、お抱えのコックが、高級な食材手に入れてもてなす場合が多い。接待してくれる側がお金持ちなんだろうけど、私の場合このパターンが多い。一つは会話の内容が漏れないように。もう一つは「普通じゃ手に入らない食材や酒類」でもてなすためのようだ。大歓迎の印と「こんなの手に入らないだろう。」的な見栄もあるとチョッピリ思ってる。

 実際一般では売ってない食材や知り合いにしか販売しない酒類ばっかり。中国の酒宴でよく飲まれるパイチュウだって、10分おきぐらいに乾杯するのであっと言う間に5~6本空いてしまってるのだが、コレが1本10万¥(円じゃないですよ、元ですよ。ご存じの方もおられるでしょうが、記号で書くと日本円と同じで非常に紛らわしい。つまり1本220万円!)。

 ところが、前にも書いたが、ほぼ下戸の私にしたらあまり嬉しく無い。流石にそんなに強要はされないが、なんだかんだで多少は飲む。ところが、さすが良い酒なんだろう、60度ぐらいあるのに気分が悪くなったりしないし、翌日二日酔いもない。中国の人達で盛り上がって良い調子で飲んでるから、私が飲まないのなんかあまり気にしてないと思うわ。

 それより、見たこともないようなデッカいフカヒレなんかの方が嬉しくて、またまた太って帰りそう。ここの社長も何か人の良いオッチャンぽくて、仲のいい仲間でこんなの会食ばかりやってるみたい。中国の人って仲間うちは凄く仲良いからね。ちなみに、このオッチャンの会社って年商300億元(6600億円)だって!。

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著者プロフィール

中川 泰一 近影Dr.中川 泰一

中川クリニック 院長

1988年関西医科大学卒業。
1995年関西医科大学大学院博士課程修了。
1995年より関西医科大学附属病院勤務などを経て2006年、ときわ病院院長就任。
2016年より現職。


バックナンバー
  1. Dr.中川泰一の
    医者が知らない医療の話
  2. 85. 中国での幹細胞治療解禁
  3. 84. 過渡期に入った保険診療
  4. 83. 中国出張顛末記Ⅲ
  5. 82. 中国出張顛末記Ⅱ
  6. 81. 中国出張顛末記
  7. 80. 保険診療と自由診療
  8. 79. マクロバイオームの精神的影響について
  9. 78. マクロバイオームの遺伝子解析Ⅲ
  10. 77. マクロバイオームの遺伝子解析Ⅱ
  11. 76. 中国訪問記Ⅱ
  12. 75. 中国訪問記
  13. 74. 口腔内のマクロバイオームⅡ
  14. 73. 口腔内のマクロバイオーム
  15. 72. マクロバイオームの遺伝子解析
  16. 71. ベトナム訪問記Ⅱ
  17. 70. ベトナム訪問記
  18. 69. COVID-19感染の後遺症
  19. 68. 遺伝子解析
  20. 67. 口腔内・腸内マクロバイオーム
  21. 66. 癌細胞の中の細菌
  22. 65. 介護施設とコロナ
  23. 64. 訪問診療の話
  24. 63. 腸内フローラの影響
  25. 62. 腸内フローラと「若返り」、そして発癌
  26. 61. 癌治療に対する考え方Ⅱ
  27. 60. 癌治療に対する考え方
  28. 59. COVID-19 第7波
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  30. 57. 若返りの治療Ⅵ
  31. 56. 若返りの治療Ⅴ
  32. 55. 若返りの治療Ⅳ
  33. 54. 若返りの治療Ⅲ
  34. 53. 若返りの治療Ⅱ
  35. 52. ワクチン騒動記Ⅳ
  36. 51. ヒト幹細胞培養上清液Ⅱ
  37. 50. ヒト幹細胞培養上清液
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  68. 19. アルツハイマー病とマクロファージ
  69. 18. ミクログリアは「脳内のマクロファージ」
  70. 17. 「経口寛容」と腸内フローラ
  71. 16. 腸内フローラとアレルギー
  72. 15. マクロファージの働きは非常に多彩
  73. 14. 自然免疫の主役『マクロファージ』
  74. 13. 自然免疫と獲得免疫
  75. 12. 結核菌と癌との関係
  76. 11. BRM(Biological Response Modifiers)療法
  77. 10. 癌ワクチン(樹状細胞ワクチン)
  78. 09. 癌治療の免疫療法の種類について
  79. 08. 食物繊維の摂取量の減少と肥満
  80. 07. 免疫系に重要な役割を持つ腸内細菌
  81. 06. 肥満も感染症? 免疫に関わる腸の話(2)
  82. 05. 肥満も感染症? 免疫に関わる腸の話(1)
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  85. 02. がん治療の現状(2)
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