第40回
ちょっと有名な名誉教授とのお話し
いい加減コロナも飽きて来たが、最近ちょっと有名な名誉教授とお話しする機会があってコロナの話題で盛り上がったのでもう少しお付き合い願いたい。本当は腸内フローラに関しての話だったのだが、免疫系から必然とコロナの話になってしまったのだ。フローラに関しては非常に面白い話になったが、これはまた別の機会に。
新型コロナCOVID-19に対しても、私と同じようなお考えだったので盛り上がったのだが、感心させられた事に、毎朝Natureなど論文10本読むのを日課にされてるらしい。幾ら、COVID-19の流行以来ネットの閲覧が無料になっているとはいえ、幾ら退官して時間がある(失礼!)とは言え、やはり大したもんだ。ご専門は感染症なんかでは無いが、変な専門家のように考えが固まっていなくて、俯瞰的に見られているし、豊富な科学的根拠の裏付けがあるから説得力がある。
で、どんな主張かと言うと、私と同じ意見という事で、ご察しはつくだろうと思うが、一言で言うと「騒ぎすぎ」だ。マスコミや一部の政治家が煽るから、実態以上に恐怖が蔓延してしまって居ると言う事だ。
しかもこの大先生、何とコロナなんか怖く無いみたいな御本まで出版されていた。「一般の方にも判るように易しく書きました。」とおっしゃっていたが、ちょっとは知識があるはずのうちの秘書が「解る?」と尋ねられて「は~まあ何とか・・・うふふ」と答えていた。「うふふ」はごまかしに決まってるからね!
しかし、このコラムを読んで頂いてる先生方は問題ないと思いますよ。
詳しくは前回までに色々書いたので、ざっくり言うと、
- 感染の終焉と言うか落ち着きには「集団免疫」が確立するしかない。Go Toトラベルは集団免疫の獲得には一定の役割を果たした。
- 私は、SARSを引き合いに出し「交差免疫」の説明をしたが、日本はCOVID-19の弱毒型(S型、K型)が強毒型(L型、G型)より先行して蔓延したから重症化が少ないと。
- PCR検査はRNAの断片を検査するもので、ウイルスの活性化を反映していない。つまり感染力の無くなったウイルスも引っ掛けている。これは以前、「PCRはCOVID-19以外のウイルスでも反応することがある。」と述べたと思うが、要はPCR陽性=感染者では無いという事。
厚生労働省は「PCRなどで新型コロナ感染が疑われる死亡者は原因の如何に関わらずコロナ患者と届ける様に。」との通達を出している。
つまり、心疾患なり他の原因で亡くなっても、新型コロナの影響の多寡にかかわらず「新型コロナ死」にしろという事だ。COVID-19で亡くなってる人は高齢や糖尿病、心疾患など免疫の弱ってる人たちで、純粋にCOVID-19感染が原因の方は極く少ないと思われる。 - 死者数や感染者数を毎日ワイドショーなどが大体的に報道するから、とんでも無く恐ろしい感染症の様に印象付けられている。世論や政治家までもこの風潮に押されて、科学的根拠に基づく判断が出来ていない。他の疾患と比較すれば一目瞭然。新型コロナCOVID-19は「感染力が強いただの風邪」。
- よって医療崩壊の原因は風評に流され感染症2類指定のままでいるから、いくらマスコミが新型コロナ病床を増やせと言っても、この2類の縛りが有る限り、一般病院、まして開業医では新型コロナが診れない。
これを5類に引下げさえすれば、保健所の諸々の仕事も不要になり、一般医療機関でも対応できる様になり、「コロナ病床」も飛躍的に増え、一部の感染者病棟に負担が偏らなくなる。インフルエンザがいくら流行っても「医療崩壊」なんかしないのは各段階の医療機関が対応できているからだ。医療関係者もみなさんなら解りますよね。 - 「3密を避ける」や都市のロックダウンの効果は認められなかった。
現実には、「PCR検査数を増やせ。」やら「新型コロナ病床をもっと確保せよ。」とか、「飲食店の規制で流行を抑止しよう。」などと頓珍漢な方向で政策が進んでいっている。こんなんじゃ落とし所がないよね。ワクチンが出回っても、いわゆる「感染者数」はなかなか減らないだろうしね。
もはや恐怖心が蔓延してしまったから、どこかで現状の方向性を劇的に変えないとホント何年経っても「終息」しないと思いますよ。
最後に本の宣伝。著者の先生からも言われたが、私も日頃から患者さんやお知り合いに新型コロナについて色々尋ねられている諸兄にぜひ読んでいただきたいと思うので。
今回の本の題名は「本当はこわくない新型コロナウイルス」。Amazonで是非探してみてくださいね。
著者プロフィール
Dr.中川 泰一
中川クリニック 院長
1977年関西医科大学卒業。1995年関西医科大学大学院博士課程修了。
1995年より関西医科大学附属病院勤務などを経て2006年、ときわ病院院長就任。
2016年より現職。
- Dr.中川泰一の
医者が知らない医療の話 - 86. マクロファージと不妊治療
- 85. 中国での幹細胞治療解禁
- 84. 過渡期に入った保険診療
- 83. 中国出張顛末記Ⅲ
- 82. 中国出張顛末記Ⅱ
- 81. 中国出張顛末記
- 80. 保険診療と自由診療
- 79. マクロバイオームの精神的影響について
- 78. マクロバイオームの遺伝子解析Ⅲ
- 77. マクロバイオームの遺伝子解析Ⅱ
- 76. 中国訪問記Ⅱ
- 75. 中国訪問記
- 74. 口腔内のマクロバイオームⅡ
- 73. 口腔内のマクロバイオーム
- 72. マクロバイオームの遺伝子解析
- 71. ベトナム訪問記Ⅱ
- 70. ベトナム訪問記
- 69. COVID-19感染の後遺症
- 68. 遺伝子解析
- 67. 口腔内・腸内マクロバイオーム
- 66. 癌細胞の中の細菌
- 65. 介護施設とコロナ
- 64. 訪問診療の話
- 63. 腸内フローラの影響
- 62. 腸内フローラと「若返り」、そして発癌
- 61. 癌治療に対する考え方Ⅱ
- 60. 癌治療に対する考え方
- 59. COVID-19 第7波
- 58. COVID-19のPCR検査について
- 57. 若返りの治療Ⅵ
- 56. 若返りの治療Ⅴ
- 55. 若返りの治療Ⅳ
- 54. 若返りの治療Ⅲ
- 53. 若返りの治療Ⅱ
- 52. ワクチン騒動記Ⅳ
- 51. ヒト幹細胞培養上清液Ⅱ
- 50. ヒト幹細胞培養上清液
- 49. 日常の診療ネタ
- 48. ワクチン騒動記Ⅲ
- 47. ワクチン騒動記Ⅱ
- 46. ワクチン騒動記
- 45. 不老不死についてⅡ
- 44. 不老不死について
- 43. 若返りの治療
- 42. 「発毛」について II
- 41. 「発毛」について
- 40. ちょっと有名な名誉教授とのお話し
- 39. COVID-19と「メモリーT細胞」?
- 38. COVID-19の「集団免疫」
- 37. COVID-19のワクチン II
- 36. COVID-19のワクチン
- 35. エクソソーム化粧品
- 34. エクソソーム (Exosome) − 細胞間情報伝達物質
- 33. 新型コロナウイルスの治療薬候補
- 32. 熱発と免疫力の関係
- 31. コロナウイルス肺炎 III
- 30. コロナウイルス肺炎 II
- 29. コロナウイルス肺炎
- 28. 腸内細菌叢による世代間の情報伝達
- 27. ストレスプログラム
- 26. 「ダイエット薬」のお話
- 25. inflammasome(インフラマゾーム)の活性化
- 24. マクロファージと腸内フローラ
- 23. NK細胞を用いたCAR-NK
- 22. CAR(chimeric antigen receptor)-T療法
- 21. 組織マクロファージ間のネットワーク
- 20. 肥満とマクロファージ
- 19. アルツハイマー病とマクロファージ
- 18. ミクログリアは「脳内のマクロファージ」
- 17. 「経口寛容」と腸内フローラ
- 16. 腸内フローラとアレルギー
- 15. マクロファージの働きは非常に多彩
- 14. 自然免疫の主役『マクロファージ』
- 13. 自然免疫と獲得免疫
- 12. 結核菌と癌との関係
- 11. BRM(Biological Response Modifiers)療法
- 10. 癌ワクチン(樹状細胞ワクチン)
- 09. 癌治療の免疫療法の種類について
- 08. 食物繊維の摂取量の減少と肥満
- 07. 免疫系に重要な役割を持つ腸内細菌
- 06. 肥満も感染症? 免疫に関わる腸の話(2)
- 05. 肥満も感染症? 免疫に関わる腸の話(1)
- 04. なぜ免疫療法なのか?(1)
- 03. がん治療の現状(3)
- 02. がん治療の現状(2)
- 01. がん治療の現状(1)
- 精神科医とは、病気ではなく人間を診るもの 井原 裕Dr. 獨協医科大学越谷病院 こころの診療科教授
- がん専門病院での研修の奨め 木下 平Dr. 愛知県がんセンター 総長
- 医学研究のすすめ 武田 憲夫Dr. 鶴岡市立湯田川温泉リハビリテーション病院 院長
- 私の研究 一瀬 幸人Dr. 国立病院機構 九州がんセンター 臨床研究センター長
- 次代を担う君達へ 菊池 臣一Dr. 福島県立医科大学 前理事長兼学長
- 若い医師へ向けたメッセージ 安藤 正明Dr. 倉敷成人病センター 副院長・内視鏡手術センター長