医者が知らない医療の話
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第59回

COVID-19 第7波

《 2022.8.10 》

前回PCRの件で愚痴ったから、今回はチョット元に戻ろうかと思ったら、やはりやはりの第7波だ。ワクチン接種者が急激に増えた。まあ4回目の接種対象者が60歳以上か基礎疾患のある人なので、皆さん焦って受けに来る。まるで、第一回目のワクチン接種のときのようだ。

まああの時と違って、ワクチンの数は確保できている。下手したら来月期限切れで何千回分か破棄しなければいけないとこだった。マイナス80℃で保管してるのに本当に数ヶ月で破棄しなければならないのか?現にワクチン足りない時は期限がいきなり3ヶ月延ばされた。この時は細かいとこまで見る患者さん達から、「証明書に記載された期限きれてる。」と指摘され、いちいち説明してた。結構めんどくさい。相手はなんか医療過誤みたいな感じで言ってくるから。外来に説明書いて置いてあるんだけど、そう言うのはものの見事に見逃してる。

そんな訳で、ワクチン有るなら何も2回目から3回目まで6ヶ月も期間空ける必要無かったのに。せめて3ヶ月で打っておけば、第6波も起こらなかったろうに。

で、今は第7波だ。ワクチンだけでなく発熱外来も多い。コロナが急激に流行すると、クリニックの先生方は守りに入って、「発熱のある患者は診ない。」とか「かかりつけの患者さんしか診ない。」所が多くうちに流れて来る。特にウチは昔ながらの夜診察してるから、大阪市の保健所さんから重宝されて「案内させてもらってます。」だって。どうりで妙に遠いところから来る人がいると思ったわ。

で、パンク!PCR検査だって1日1000件超えて、東京から応援来てもらうだけじゃ足りなくて、測定機械増やすしかないんだけど、こんな時にただでさえ引っ張りだこの測定機が、今日頼んで、明日来るなんて無いだろうと思ってたら、ウチのいつもの「出来る総務」が話しつけてきた!

何やら横で聞こえてきた所では、「世のため人の為、患者さんの命を救う為云々カンヌン」だったが、まあお見事!

お陰で何とか乗り越えているが、スタッフは限界。
オマケに、発熱外来もやってるから、ワクチンの予約時間制限してるけど、数は減らない。発熱外来ももっと診てあげたいけど、事務がパンク。

厚労省のハーシスとかのシステムの入力が大変で、毎日3時間ぐらいかかってる。大体こんなのは本来なら保健所の仕事だろが。そもそも、こんな細かい個人情報や、何処どこで誰と接触したとか、細かい症状とか、ワクチンの接種日の情報なんか必要か?どっかの自称専門家が、細かいデータも必要とか言ってるんだろうけど、実際の医療行為より事務作業の方が多過ぎて診療出来ないなんて、本末転倒じゃないですか?

ワクチン接種にしたって、発熱外来にしたって、事務作業が多すぎて敬遠してる医療機関が多いと思う。一般の医療機関、特にクリニックなんかは、役所みたいに人が余ってる訳じゃないんだから。人が足りないからって、高額のバイト簡単に増やせるわけでもないんだから。この膨大な紙作業なんて無駄以外の何物でもないと思う。だから、開業医が対応できず、莫大な費用かけて接種会場作ったりと余計無駄の連鎖しているわけだし。

中国の友人が「その細かい所が日本の良いところじゃないですか。」って言ってるけど、褒められてるより慰められてるように感じる私はひねてます?

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著者プロフィール

中川 泰一 近影Dr.中川 泰一

中川クリニック 院長

1988年関西医科大学卒業。
1995年関西医科大学大学院博士課程修了。
1995年より関西医科大学附属病院勤務などを経て2006年、ときわ病院院長就任。
2016年より現職。


バックナンバー
  1. Dr.中川泰一の
    医者が知らない医療の話
  2. 86. マクロファージと不妊治療
  3. 85. 中国での幹細胞治療解禁
  4. 84. 過渡期に入った保険診療
  5. 83. 中国出張顛末記Ⅲ
  6. 82. 中国出張顛末記Ⅱ
  7. 81. 中国出張顛末記
  8. 80. 保険診療と自由診療
  9. 79. マクロバイオームの精神的影響について
  10. 78. マクロバイオームの遺伝子解析Ⅲ
  11. 77. マクロバイオームの遺伝子解析Ⅱ
  12. 76. 中国訪問記Ⅱ
  13. 75. 中国訪問記
  14. 74. 口腔内のマクロバイオームⅡ
  15. 73. 口腔内のマクロバイオーム
  16. 72. マクロバイオームの遺伝子解析
  17. 71. ベトナム訪問記Ⅱ
  18. 70. ベトナム訪問記
  19. 69. COVID-19感染の後遺症
  20. 68. 遺伝子解析
  21. 67. 口腔内・腸内マクロバイオーム
  22. 66. 癌細胞の中の細菌
  23. 65. 介護施設とコロナ
  24. 64. 訪問診療の話
  25. 63. 腸内フローラの影響
  26. 62. 腸内フローラと「若返り」、そして発癌
  27. 61. 癌治療に対する考え方Ⅱ
  28. 60. 癌治療に対する考え方
  29. 59. COVID-19 第7波
  30. 58. COVID-19のPCR検査について
  31. 57. 若返りの治療Ⅵ
  32. 56. 若返りの治療Ⅴ
  33. 55. 若返りの治療Ⅳ
  34. 54. 若返りの治療Ⅲ
  35. 53. 若返りの治療Ⅱ
  36. 52. ワクチン騒動記Ⅳ
  37. 51. ヒト幹細胞培養上清液Ⅱ
  38. 50. ヒト幹細胞培養上清液
  39. 49. 日常の診療ネタ
  40. 48. ワクチン騒動記Ⅲ
  41. 47. ワクチン騒動記Ⅱ
  42. 46. ワクチン騒動記
  43. 45. 不老不死についてⅡ
  44. 44. 不老不死について
  45. 43. 若返りの治療
  46. 42. 「発毛」について II
  47. 41. 「発毛」について
  48. 40. ちょっと有名な名誉教授とのお話し
  49. 39. COVID-19と「メモリーT細胞」?
  50. 38. COVID-19の「集団免疫」
  51. 37. COVID-19のワクチン II
  52. 36. COVID-19のワクチン
  53. 35. エクソソーム化粧品
  54. 34. エクソソーム (Exosome) − 細胞間情報伝達物質
  55. 33. 新型コロナウイルスの治療薬候補
  56. 32. 熱発と免疫力の関係
  57. 31. コロナウイルス肺炎 III
  58. 30. コロナウイルス肺炎 II
  59. 29. コロナウイルス肺炎
  60. 28. 腸内細菌叢による世代間の情報伝達
  61. 27. ストレスプログラム
  62. 26. 「ダイエット薬」のお話
  63. 25. inflammasome(インフラマゾーム)の活性化
  64. 24. マクロファージと腸内フローラ
  65. 23. NK細胞を用いたCAR-NK
  66. 22. CAR(chimeric antigen receptor)-T療法
  67. 21. 組織マクロファージ間のネットワーク
  68. 20. 肥満とマクロファージ
  69. 19. アルツハイマー病とマクロファージ
  70. 18. ミクログリアは「脳内のマクロファージ」
  71. 17. 「経口寛容」と腸内フローラ
  72. 16. 腸内フローラとアレルギー
  73. 15. マクロファージの働きは非常に多彩
  74. 14. 自然免疫の主役『マクロファージ』
  75. 13. 自然免疫と獲得免疫
  76. 12. 結核菌と癌との関係
  77. 11. BRM(Biological Response Modifiers)療法
  78. 10. 癌ワクチン(樹状細胞ワクチン)
  79. 09. 癌治療の免疫療法の種類について
  80. 08. 食物繊維の摂取量の減少と肥満
  81. 07. 免疫系に重要な役割を持つ腸内細菌
  82. 06. 肥満も感染症? 免疫に関わる腸の話(2)
  83. 05. 肥満も感染症? 免疫に関わる腸の話(1)
  84. 04. なぜ免疫療法なのか?(1)
  85. 03. がん治療の現状(3)
  86. 02. がん治療の現状(2)
  87. 01. がん治療の現状(1)

 

  • Dr.井原 裕 精神科医とは、病気ではなく人間を診るもの 井原 裕Dr. 獨協医科大学越谷病院 こころの診療科教授
  • Dr.木下 平 がん専門病院での研修の奨め 木下 平Dr. 愛知県がんセンター 総長
  • Dr.武田憲夫 医学研究のすすめ 武田 憲夫Dr. 鶴岡市立湯田川温泉リハビリテーション病院 院長
  • Dr.一瀬幸人 私の研究 一瀬 幸人Dr. 国立病院機構 九州がんセンター 臨床研究センター長
  • Dr.菊池臣一 次代を担う君達へ 菊池 臣一Dr. 福島県立医科大学 前理事長兼学長
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